少年時代(その6)

Remonn1 ボクの初恋のことです。ボクは小学生の頃は身長も中程で、成績も中程でいたずらばかりするあまりよくない生徒でした。小学4年生の時、校庭の花をちぎって隣の座席の女の子にあげました。(少しませていたのかな?)でも、先生に見つかり「この花を元通りに付けてきなさい。花は生き物なのですよ。」といわれました。ボクは花を持って校庭の花壇のところに行くのですが、それからどうしていいのかわかりません。じっと座ってアリとアリマキの動きを眺めていました。ボクはお昼も食べず、すべての授業が終わるまで校庭にいました。みんなが帰り、先生が校庭のボクがいるところにやって来て、「まだいたの、もう帰りなさい。」といいました。ボクはそれ以来、生き物とそうでないものの区別ができるようになったと思います。女の先生でしたが、今考えると立派な先生でした。
ボクが花をあげた子は名前も覚えていません。その子が好きだったわけではなく、ボクは成績もよく、ダントツにかわいい子(Tさん)がいてその子が好きでした。でも、その子はボクのことなんか何とも思っていなかったはずです。その子はいつも副委員長で、委員長は成績のよい男の子(S君)でした。2人はいつも噂になっていました。ボクとS君は友達でした。だから、ボクが誰が好きかは決していいませんでした。そのまま、何も言わずにボクとS君は公立の中学に行きましたが、Tさんは私立の中学に行ってしまいました。でも、このときにボクはなんの心の痛みも感じませんでしたから、これは初恋じゃなかったのだと思います。
中学に進みボクは少しは勉強もするようになりました。塾にも通い始めました。その塾にTさんとは違う魅力の持ち主のNさんがいました。彼女はきれいというのではなく、かわいいという表現の方が合うような女の子でした。宮崎あおいさんのような感じです。しかも成績もいいのです。この頃は試験を返してくれるとき点数もいわれました。それは塾だけでなく学校もそうでした。中学の3年間と高校の3年間の6年間彼女のことばかり考えていました。
中学ではボクはバスケット部に入っていましたから、夕方は練習していることが多かったです。こんな時も彼女の姿は遠くから一瞬で判別できました。彼女はいつも弾むように歩いているのです。そして背筋をいつも伸ばしていました。そして歩くたびに肩まである黒髪が優雅に揺れるのです。こんなに思っていても誰にもいわず、もちろん彼女自身にもいいませんでした。そんな時代でした。
中学2年生のある日、台風がひどくなってくるということで午前中で授業は終わり、みんな家に帰るように言われました。その時はまだ風はそんなに強くないのですが、雨がそれこそ土砂降りで、遠くの景色はぼんやりとしか見えないくらいでした。
ボクが帰ろうとして、学校から出るときに少し前に彼女が友達と2人で歩いてるのが見えました。鞄をもち、傘をもち、そして鞄を持つ手でスカートを少しめくりあげてぬれないようにしていました。ボクは雨の中でしたが、ぼんやりと見える白い足に視線がからみつき、いつの間にか30mほど離れて、後をつけていました。ボクは彼女が後ろを振り返りそうな時は傘で顔を隠しました。15分ぐらい歩くと雨も小降りになり、ボクは彼女がよく見えるようになりました。時々彼女はそんなこと気にならないのか、スカートを随分上まであげていました。ボクはハットして、途中で自分の家に向かいました。何となくその日から食欲も落ち、心の欠落感があり、毎晩寝るときにはその日の彼女の仕草を思い出していました。中学の3年間が終わり、ボク達は違う高校に進学しました。でも、高校に行っても彼女のことを忘れませんし、通学で毎朝のように途中までが同じコースでした。これがたぶんボクの初恋でした。大学にはまた別々になります。ボクは大学1年の時、彼女の家を探し、訪ねてゆきます。そして初恋は終わります。この辺はまたいつか書きます。