医療崩壊

ここはボクのひとりごとですから、思っていることを自由に書きます。世間では医療崩壊とか騒いでいますが、これは患者さん側から見た医療崩壊です。「安心して子供も生めない」とか「急病になってたらい回しにされたら恐い」とか「病院に行っても紹介状のない人は診てくれなくなった」等々あります。これらはすべて患者さん側の医療の危機なのです。
医療の現場にいるボク達は何十年と続く医療危機だから、慢性疾患みたいなものでそれ程危機感がないです。慢性的に崖っぷちにいると、がけの下を見ることになれてしまったといえるのかも知れません。
昔から医師不足で、ボクの若かった頃などは3日か4日に一度は当直していました。自分の患者さんが重症になれば、当直室が一杯の時は病室のベッドで寝ました。大部屋などで寝ていた時は、看護婦さん(看護師さん)はそっとささやく声で起こしてくださいました。その当時から「あと2年か3年経てば人(医師)を送れるからそれまでは辛抱してくれや」と言われてきました。そして今日までそんな日は来ませんでした。医師が過剰勤務で医療体制を支えてきたのです。
それを漢字も読めない首相が「医師は社会的常識がかなり欠落している人が多い」なんて言うのだから、頭に来た人もいたのではないでしょうか?確かに医師にそんな人もいますよ。でも、政治家だって、警察官だって、学校の先生だっていますよ。医師の大多数が社会的常識を欠如してるなんてことはないし、大きな誤解ですね。
やっと医師が少し増えてきたかなと思った10年ほど前から、今度は病院から開業される先生が続出しました。そのせいで病院勤務の医師は再び悪夢のような、苛酷な勤務の中に放り込まれたのです。
先日意識朦朧とした中で自分自身のとった行動は記憶にないように、寝ては起こされ、寝ては起こされ、やっと夜明けが来たら今度は日常の勤務が待っている様な状況で人の命を預かる仕事をしなければならないのはどれほどのストレスか・・・・。
きちんとした仕事がしたいが、身体的にも精神的にも限界を超えている時に医療ミスが起これば責任は問われました。
以下Wikipediaより引用

厚生労働省労働基準局は2002年3月、「医療機関における休日及び夜間勤務の適正化について」という通達を出した。これによると、

  • 労働基準法における宿日直勤務は、夜間休日において、電話対応、火災予防などのための巡視、非常事態が発生した時の連絡などにあたることをさす。
  • 医療機関において、労働基準法における宿日直勤務として許可される業務は、常態としてほとんど労働する必要がない業務のみであり、病室の定時巡回や少数の要注意患者の検脈、検温等の軽度または短時間の業務に限る。
  • 夜間に十分な睡眠時間が確保されなければならない。
  • 宿直勤務は、週1回、日直勤務は月1回を限度とすること。
  • 宿日直勤務中に通常の労働が頻繁に行われる場合は、宿日直勤務で対応することはできず、交代制を導入するなど体制を見直す必要がある。

と通知されている。
とのことです。現役の勤務医が聞けば、怒るでしょうね。役人は病院の当直医はこの程度だと考えているという事です。

だから、当直医の勤務は勤務時間に入らないのです。だって十分眠れているはずだからです。厚労省はこんな非現実的な通達は即刻撤回して、勤務医が安い給料で自分の命を削りながら仕事をしている現実を直視して欲しいものです。
勤務医の給料は卒後10年ぐらいしたら、一般のサラリーマン以上になるかも知れませんが、勤務時間はおそらく、1.5倍以上はあると思います。
今日は勤務医のみ援護しましたが、開業医については詳しくは知らないもので・・・。でも、朝9時から夜の8時半とか9時まで働くのですから、開業医の先生も勤務時間は長いですね。